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命を減らす決断
胎児減数手術とは、妊娠中の胎児の数を減らす技術です。
「間引き」という言葉をご存じでしょうか。子供を授かっても、家が貧しくて、これ以上子供がいたら、一家が飢え死にしてしまう、という時代がありました。避妊をするための知識もなく、それを許されない女性が多くいた時代に産婆さんや家の人が「間引き」をしていました。母親には死産だった、と伝え、生まれたばかりの生命を断ってきたのです。
現代の生殖技術の進歩は新しい形の「間引き」を、生み出しています。
排卵誘発剤の投与を受けた女性は、卵子が複数できるため、妊娠すると複数の受精卵ができることになります。同じように、体外受精でも複数の受精卵ができます。これが多胎妊娠です。
多胎妊娠では流産や早産の可能性があり、出産しても子供に後遺症が残る心配があります。また、不妊治療を受けている女性は年齢が高い方が多いので、母子ともに妊娠・出産に伴う負担がより大きくなります。減数手術は、その心配や負担を重く見た専門医が危険性を回避するためにおこなわれます。
不妊治療を受けてきた患者さんにとって、妊娠を告げられた時の喜びはたとえようのないものでしょう。その喜びもつかの間、多胎を告げられて、ひとつだけの生命を選び、それ以外の胎児を減らす治療を受けなければならない現実が、不妊治療の現場で起きています。
命を授かった喜びと一緒に、命を減らす決断をすることを同時に強いられてしまうのです。
減数手術は注射だけで済む技術です。減らされる胎児は、膣壁から塩化カリウム注射を打たれ、死亡します。死亡した胎児は母胎に自然吸収されるため、その亡骸を見ることなく、胎児を減らすことができるのです。選ばれたひとつの胎児だけに、母体からの栄養が注がれて出産となります。
減数手術によって、心のわだかまりを抱えて生きていくのは、不妊治療を受けた女性たちです。そのわだかまりを割り切ることで、出産の喜びをかみしめる人もいるでしょう。生命を授かることはすばらしい、でも、この生命は減数手術によって生き残った生命であるという厳しい現実。それが不妊治療のひとつの側面なのです。
2001年9月10日
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