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万能でない技術
アメリカでは、身体的に何の問題もないカップルがふつうにセックスをして、1年子どもができなければ不妊、と定義されています。しかし、これはあくまでも目安と考えていいようです。結婚して何年かたってから子どもを授かることは、よくあることだからです。
健康な男女が最高のタイミングでセックスをしたても、妊娠するのはおよそ20%といわれています。100%の確率で妊娠しないのは、卵子や精子の状態が良くなかったり、受精しても受精卵の状態が悪くて子宮に着床しないことがあるからです。人間の体は常に変化しているため、子どもを授かるかどうかは、神のみぞ知る営みです。
けれども、人工授精という技術の登場によって不妊で悩む患者をとりまく環境は大きく変わりました。人工授精とは、排卵の時期にあらかじめ採取した精液を子宮内に注入して妊娠をうながす方法です。不妊治療をしているクリニックでは、人工授精の前日に排卵誘発剤を注射して、受精しやすくしています。
人工授精による妊娠率は、1回当たり10%以下といわれています。医師によっては20%というデータを出していますが、そのカップルの体の状態がそれぞれ違うので、確実な統計データとしてはまだ整理されていません。一般的に6回の人工授精で妊娠しないならば、それ以上の人工授精は効果がない、というのが専門家の見解です。
人工授精によって、確実な妊娠が保障されるわけではありません。不妊で悩んでいる患者さんのなかには、このような基本的な事実をインフォームドコンセントされないまま、何年も治療を受けているケースがあります。技術は万能ではありません。可能性と限界を知ったうえで、ベストの選択をしたいものです。
そして、不妊治療をあきらめたあとに、自然妊娠する人が少なからずいるという事実も記憶しておいてください。いくら技術が進歩しても、子どもを「授かる」という事実はしばらく変わりそうもありません。
現在では、男性の精子に問題があって、妊娠しないケースがあることもわかってきました。にもかかわらず、不妊治療では女性の心と体に大きな負担がかかります。家族から心理的重圧を受けている人もいます。そのようなストレスを受けながら、子どもをつくる努力をしなければならない、社会状況そのものが、不妊女性を苦しめているともいえます。
治療に救いを求める前に、なぜ不妊治療をしてまで子どもが欲しいのか、をじっくり考えていくこと。
あなたの人生に子どもはなくてはならない存在なのでしょうか。そのことを考え抜くことが不妊という困難を乗り越える第一歩です。
2001年8月13日
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