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Special Edition
  最先端技術に翻弄されないための12のヒント 第2回
  受精卵の遺伝子診断


人間の手で操作することを
可能にした技術

 人間は、受精卵の「質」を管理する技術を手にいれました。これは、どういうことなのでしょうか?
 人間が性交し、卵のなかに精子が飛び込んで受精卵ができます。このたったひとつの受精卵が2つに分裂、さらに分裂を繰り返して、胎内で成長して胎児になっていき、10ヶ月で出産を迎えます。
 受精卵の遺伝子診断とは、受精卵の段階で病気になりやすいかどうかを診断して、正常な子どもだけを出産させようという技術です。
 この技術は、体外受精の技術と、遺伝子診断技術を応用することで発達してきました。精子と卵子を体外で受精させるのですが、その受精卵のすべてを子宮に戻すわけではありません。異常のない受精卵だけを子宮に戻すのです。それでは、一体どうやって受精卵の異常と正常を見極めるのでしょうか。

 受精卵遺伝子診断では、体外受精をおこなってから2、3日後の、4個か8個に分裂した受精卵から細胞の一部を取り出し、診断するのです。そして、その結果にもとづいて正常な受精卵だけを子宮に戻すのです。
 世界で初めての遺伝子診断は、1990年、イギリスでおこなわれています。ある研究者が受精卵の性別判定をして、男性だけに発症する遺伝病を避けるために、女性になる胚(受精卵がさらに成長したもの)だけを子宮に戻しました。その後、遺伝子診断技術の精度は、どんどん上がっていき、現在では血友病、先天性代謝異常(フェニルケトン尿症など)、家族性高コレステロール血症なども診断が可能になっています。

 受精卵の遺伝子診断は、受精という今まで偶然によって支配されてきた営みを、人間の手によって操作するということを可能にしてしまったのです。
 これは幸せなことでしょうか。ある人にとっては福音ですが、ほかの見方もあります。
 第1に、受精卵という生命になったばかりの存在を、科学的に診断することで「生きるに値する命」かどうかを決めることが許されるのかどうか、という問題があります。妊婦は自分の診断結果によってその受精卵を捨てるかどうかを決める立場に立たされるのです。第2に、質の良い受精卵をつくるために、質の良い卵かどうかを検査されることです。検査対象は女性で、さまざまな検査を受けなければなりません。そのストレスは女性にかかっていきます。
 仮に、受精卵遺伝子診断の結果が何らかの病気になる可能性を指し示したとしても、100%その病気になるわけではありません。ひょっとしたら、強くたくましい子どもに育つかもしれないのです。技術は進歩していますが、100%確実な技術が存在しないのも事実です。
 受精卵の遺伝子診断は、女性と子どもの生き方を「予言する」技術なのかどうか。まだその評価は確定していないのです。


2001年7月23日

石井 政之
プロフィール
 医療、看護、バイオテクノロジーをテーマに取材をしているフリーライターです。硬いテーマを追いかけることが多いので、ジャーナリストといわれる機会が増えました。でも、なんでも書く猥雑さを忘れずに仕事をしていきたいと思っています。10年以上「顔」にこだわって取材をしています。その成果を『顔面漂流記』(かもがわ出版)を昨年出版しました。趣味はジョギング。目下の悩みは、忙しくて空手の稽古に行けないことでしょうか。
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