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悪い診断結果の場合を考えずに
受診する人がまだまだ多い
自分の体のことは自分で決める。この考え方が当たり前の時代になってきました。しかし、バイオテクノロジーなどの先端医療の発達によって、患者が決めることがどんどんひろがり、医療の素人には理解することさえ難しくなっているのではないでしょうか。
たとえば、代理母、人工受精、再生医療、遺伝子診断などの言葉の意味を正確に知っている人がどれだけいるでしょうか? 医療やサイエンスに詳しい人をのぞけば、何がなんだかわからない、という感想をもつのが一般的だと思います。しかし、これらの技術が病院にどんどん入ってきているために、自分とは関係がないといっていられなくなってきました。患者はこの技術を使うかどうかを、自分の責任で決めなければならないのです。そのときのために、12回にわたって、さまざまな先端技術とその対処方法について一緒に考えていきたいと思います。
生まれる前に胎児の状態を診断することを「出生前診断」といいます。これには着床前診断、絨毛検査、トリプルマーカー検査、羊水検査、胎児超音波検査などがあります。
超音波診断は、エコーと呼ばれる装置をつかって胎児を画像として映し出すものです。モノクロ画像で、胎内の胎児が動いている様子をみたことがあるかもしれません。この技術によって、胎児の外見上の「障害」を確認することができます。手足がそろっているのかどうか。無脳症かどうか、などです。絨毛診断は、胎盤にある絨毛をとって調べることで染色体異常、遺伝子異常などがわかります。トリプルマーカー検査は、ダウン症などの染色体異常が高い確率でわかる技術です。ダウン症は染色体の突然変異が原因とされており、だれにでも生まれてくる可能性のある先天異常です。知的障害、内臓疾患などがある場合がありますが、その症状には個人差が大きいのです。
さて、これらの診断を受けるかどうかを決めるのは、妊婦です。しかし、その内容を詳しく知っている人はあまりいません。それぞれの検査は100%安全ではありません。むやみにエコーを胎児にあてることを、アメリカの食品医薬品局(FDA)は戒めていますし、検査によっては流産する可能性もあるのです。
検査を受ける妊婦は増えています。ある産婦人科医は、多くの妊婦は、検査とは「正常」といってもらうために受けるものと思っている人が多い、と指摘しています。もし「異常」と診断されたらどうするのか、考えた上で検査を受けている人はまだまだ少ないのが実状です。ただし、検査によってダウン症になる可能性がある、と診断されると、それを「確定診断」と思って、中絶する妊婦が半数ほどいるという報告もあります。ダウン症の当事者と親たちでつくる「日本ダウン症協会」は、出生前診断を「凍結」するように、と1997年に求めています。理由のひとつとして、出生前診断の普及によってダウン症の当事者たちが生きにくい社会が生まれるのではないか、という危機感があります。
出生前診断によって、さまざまな障害と先天異常が明らかになります。ところが、その診断結果から導き出されるすべての症状について、詳しいことを知っている人はいません。知らないから心配になり、中絶をしてしまう。それを個人の選択、自分で自分の体を決めた、といえるのでしょうか。重い決断を、妊婦という医療の素人に押しつけているだけのような気がしてなりません。
2001年7月9日
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