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賛否両論のある遺伝子特許
特許とは、ある技術を発明・考案した人がそれを専有できる権利である。遺伝子情報を解析し、その解析データから独自の機能を発見したとき、それも特許として認められるようになっている。
金銭、土地のような財産とは別に、知的所有権という権利が認められている。知的所有権で、もっとも馴染みがあるのが著作権だろう。たとえば小説家にはその作品に著作権がある。作家の承諾なしで、作品を複製・販売したら著作権の侵害で訴えられる。
特許権は、知的所有権の中でも「自然法則を利用した技術的思想のうち高度なもの」と定義されている。その有効期限は、出願日から20年である。優れた技術を特許化すれば高収益につながる。しかも20年間、競争相手はいない。
昨年6月米国のクリントン大統領が、国際ヒトゲノム計画と、ベンチャー企業セレーラ社とともに、ゲノム解析終了宣言をしたが、この背景には特許を巡る激しい競争があった。日米欧の国際共同チームは、ヒトゲノム情報は人類共有の財産、として、その解析データを無償で公開すると宣言していたのだが、一企業であるセレーラ社が、解析したデータは企業の私有財産であり、その成果を特許にすると主張していた。
遺伝子は自然物である。それに特許という権利を与えていいのだろうか。これには賛否両論がある。
遺伝子特許が注目を浴びるきっかけになったのは、1991年2月、米国大統領競争力委員会がまとめた「国家バイオテクノロジー政策報告書」だった。このなかで、遺伝子特許戦略が打ち出されたのだ。当時は、自然物である遺伝子は特許にならない、という考えが科学者や研究者の間でも常識だったのである。報告書が発表された直後、米国の国立衛生研究所(NIH)が、ヒトの遺伝子の機能がはっきりわからないまま特許を申請して、批判を浴びた。NIHはすぐに申請を取り下げた。
10年後の現在、遺伝子特許申請は当たり前になりつつある。昨年2月、米国バイオ企業がエイズ感染の鍵を握るとされる遺伝子の特許を取得した。この会社は、武田薬品工業などに特許使用権を与える契約を結んでいる。同年8月には、日本の大手化学企業が米国で遺伝子特許4件を取得した。この特許は、日本と欧州では、特許成立に不可欠な「遺伝子の機能」を明確にしないまま出願されており、日本では取得できない。米国では遺伝子特許の取得基準がゆるやかなのである。自国の厳しい審査基準を嫌って国境を越えて特許申請する企業が現れている。
日本では、98年から大学の技術を民間企業に移転する技術移転機関(TLO)が相次いで設立され、バイオ技術特許を促進しようとしている。日本政府のバイオ研究予算の急増がこの動きを後押ししており、今年になって、その特許出願数が増加している。遺伝子特許申請ももちろんある。
しかし、遺伝情報を特許化し、企業の利益にしていいのか、という倫理問題はまだ決着がついていない。ある病気が特定のゲノムによってもたらされることが明らかになり、その情報を活用して新薬を開発するとき、そのゲノムを特許化した企業に高額の特許使用料を支払うことになる。その特許使用料は、めぐりめぐって消費者である患者が支払わなければならない。また、ゲノムの機能がわからないまま特定のゲノムを特許化できる現状は「遺伝子の青田買い」とも言われている。
自然物だった土地が投機の対象となったように、遺伝子も同じ道をたどろうとしているのだろうか。
2001年5月21日
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