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Special Edition
  知って得する精神保健福祉 第3回
  本人のために正しく使いたい医療保護入院


慎重に判断される制度の適用

 案外知られていないことですが、精神医療は、精神保健福祉法という法律にしたがっておこなわれる医療です。精神保健福祉法とその関連通知を納めた本は、英和辞典ほどのボリュームのある分厚いもので、ここに精神保健福祉に関する法律の詳細が記されています。「柏崎少女監禁事件」の容疑者も「佐賀のバスジャック事件」の少年も、ともに本人の意思ではなく、医療保護入院が必要であると精神保健指定医に判断され、保護者の同意を得て精神病院に入院したケースです。

精神保健福祉法の規定により入院、には以下のような形態があります。

・任意入院……自発入院
・強制的入院……非自発入院
・都道府県知事の権限での入院……措置入院 緊急措置入院(措置入院の緊急形態)
・指定医の判断と法的に定められた保護者の同意による入院……医療保護入院

 精神医療の特徴は「自分で調子が悪いので、医者にかかろうと判断して医療を受ける」いわゆる任意入院のほかに「自分は病気のために、今医療が必要である」ということを理解できない状態の人も対象になっているという点です。
 精神の病気であるにもかかわらず、本人が受診の必要性を理解できないでいて、そのためにその人が健康上、あるいは社会的に不利益を被るというような場合に適用されるのが、医療保護入院という制度です。
 これは精神保健指定医という医者1名の判断と、家族などの保護者の同意によっておこなわれる強制入院の形態です。つまり「精神病のために判断能力の低下した人間の生命・財産を公権力や代理人が保護する」本人の利益のための入院、ということになります。

 次に、その人が精神の病気のために自分自身を傷つけたり、他人に大きな迷惑を及ぼすような場合には、措置入院という制度が適用になります。これは精神保健指定医2名による病気の判定と、都道府県知事の権限による強制的な入院です。措置入院は「精神病のために一般社会に危害を及ぼす人を、公権力が強制的に隔離する」という側面もあります。
 精神科医は、できるだけ患者さんが自分の状態を納得した上で、自分の意思で入院を決める「任意入院」となるように説得をするのですが、どうしても本人の同意が得られない場合には、家族の同意などにより医療保護入院を決行することがあります。
 しかし、家族が患者さんのためを考えるというよりは、自分達の利益のために、老人や家庭内暴力の子どもなどを精神病院に入院させようとする場合も、残念ながらあることです。
 良識ある精神病院はこのようなケースを断るものです。しかし例えば「自分は病気ではない」と言い張る本人と「病気だから入院してほしい」という家族の利害が対立し、はっきりと判断のつかない場合も多いのです。その場合「精神の病気で、入院が必要かどうか」を判定するのが、精神保健指定医の仕事です。
 精神科の入院には、人権侵害の可能性が内包されているのです。だからこそ精神医療関係者は、かなり慎重にその判断をする必要があるのです。


2001年4月27日

月崎 時央(つきざきときお)
プロフィール
1959年生まれ フリーランスジャーナリスト
 1994年から精神保健福祉の取材を専門におこなう。著書に『正しい精神科のかかり方』(小学館)がある。現在、週刊メールマガジン「市民とマスコミと精神保健福祉をつなぐネットワーク情報誌」『LA LUNA 』を発行し、精神保健福祉関係の最新の情報、患者さんのエッセイなどを紹介している。
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