|
今週から5回シリーズで、最近話題になった医学にかかわる用語を解説していきたい。1回目はオウム事件の被告に対する精神鑑定依頼の際、申し立てにも登場した「精神障害」について取り上げる。
規範のない現代社会で増加傾向に
精神分裂病などの精神病の範疇には入らず、視線恐怖症や対人恐怖症、醜形恐怖症といった神経症でもないが、ふつうの人とくらべて誰がみてもおかしな言動に悩んでいる人たちがいる。主に対人関係上の問題となるもので「人格障害」と呼んでいる。人格障害は比較的新しい概念で、その症状によって妄想性、分裂病質、分裂病型、自己愛、境界性、反社会性、演技性、回避性、依存性、強迫性の9つに分類されている。その人が妄想性の人格障害か、強迫性の人格障害かを判別する診断基準が各国共通にもうけられているが、その内容は一般の人にはとても理解できない。理解できないというのはふつうの日本語として解釈するのがかなり難解だからである。
精神科医に話を聞いてみると、確かにここ数年、対人関係において悩みやトラブルを抱えて相談にやってくる人たちが増えているという。確実な統計数字があるわけではないが、多くの精神科医に聞いてみると、これについてはほぼ同一意見である。しかも精神科医のなかにも何らかの形で人格障害とみられる医師がいるとのケースも聞かれた。
自分が何らかの人格障害になっているという「病識」がある人は、精神科医のカウンセリングや治療を受けて、回復することも可能だが、問題はそうした病識のない人である。そうした人たちとつきあうとどうなるか。例えば、自己愛性人格障害をケースにして説明しよう。自己愛性人格障害とは、ある刺激や衝撃を受けた場合に、自分を過剰に防衛するあまり相手を徹底して攻撃するタイプである。それは、常識的に判断すればその人に落ち度があるのだが、それを絶対に認めない人格を有している人といったほうがわかりやすいだろう。あなたの周囲にもそうした人はいないだろうか。
こうした症状がうまれてきた背景は、社会に規範がなくなったことと、個性の尊重や自由の追求により価値観が多様化したこと、社会にゆとりがなくなってきたことと無関係ではない。また、一見、大量の情報があふれ、ものが豊かにあふれ、自由になったようにみえるが、その分、何を規範にして、自我を形成していいかわからない若い人たちが増えてもいる。人間関係におけるコミュニケーションのとりかたが下手な若い人たちが増えているということだ。社会への信頼が薄れ、何をやってもいいんじゃないという規範のない世の中で、ますます人格障害を訴える人は増えてくると、ある精神科医は警告する。
2001年3月19日
|