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  定期健診や人間ドックの検査データをチェックしておこう 最終回
  血液生化学検査(その4)

肝臓に多く存在するGOT、GPT

 肝細胞をはじめ多くの臓器にはさまざまな酵素が存在し、細胞が破壊される病気にかかると、酵素が血中に漏れ出て数値が高くなります。そのため、血中の酵素の量を調べることによって、どこかに障害が生じていないかを知ることができます。
 GOT、GPTという文字を健康診断の検査項目でよく見かけます。これは肝機能を調べるもので、いずれもたんぱく質を分解してアミノ酸をつくる酵素です。脂肪肝や慢性肝炎になるとGPTがGOTを上回り、肝硬変に進行すると逆転してGOTが上昇して、GPTとの比率が1:1を上回ります。肝がんになると、GOTはさらに高値を示します。
 また、GPTのほとんどが肝臓に存在するのに対し、GOTは腎臓や心筋、骨格筋、赤血球などにも多く存在します。GPTが正常値域にあるのに、GOTが高値になるときは、心筋梗塞、筋ジストロフィー、筋炎、溶血性疾患などの可能性もあります。GOTの正常値は8〜40IU/l、GPTは5〜45IU/lです。

飲酒の習慣のある人はγ-GTPに注目

 日ごろからお酒を多く飲む人が特にチェックしなければならないのが、γ-GTPの数値です。γ-GTPは肝臓、腎臓、膵臓、脾臓、小腸などに含まれ、アルコールに非常によく反応します。たとえば検査の前日にアルコールを飲んだだけでも、はっきりと数値に現れます。現在、正常値(男性5〜50IU/l、女性2〜35IU/l)にあっても、お酒を飲んだらγ-GTPが上昇しやすい人は、今後アルコール性肝障害になる危険性が高いので、注意しなければなりません。γ-GTPは、肝細胞では肝臓と総胆管のつなぎめ辺りに多く存在するため、胆汁の流れが悪くなる閉塞性黄疸などでも値が上昇します。
 もう1つ、胆汁の流れが悪くなって高値となる酵素にLAPがあります。LAPは胆汁に多く含まれ、胆石や膵頭部がんなどで胆道がふさがれ、胆汁の流れがとどこおるとLAPが血液中に漏れ出て上昇します。また、肝がんや肝炎、肝硬変などの肝疾患のときも高値を示します。男性80〜170IU/l、女性75〜125IU/lが正常値です。

まだまだあるチェックすべき酵素

 糖質がエネルギーに変わるときに働く酵素の1つにLDHがあります。LDHはあらゆる組織に広く分布しています。そのため、LDH活性が血清中に増えるのは、いずれかの臓器で組織の損傷が存在し、LDHが血清へ逸脱していることを意味しています。特に心筋梗塞、悪性腫瘍、肺疾患、溶血性疾患や筋ジストロフィーで活性の著しい上昇が見られます。LDHには5種類のアイソザイム(LDH1〜LDH5)があり、臓器によりこれらのアイソザイムの比率が異なります。心筋ではLDH1が多く、肝および骨格筋ではLDH5が多いのです。アイソザイム分画では、心筋梗塞は、LDH1および2、肝疾患ではLDH4および5が高値を示します。
 現在では、LDHが高値となった場合は、LDHアイソザイムの検査をして、どのアイソザイムが上昇しているかを調べます。LDH1および2が上昇している場合は心筋梗塞、LDH4および5が上昇している場合は肝疾患が考えられる、というように、ある程度損傷臓器の推定ができます。正常値は230〜460IU/lです。

 そのほか、コリンエステラーゼやアルカリフォスファターゼなどの酵素も検査項目に含まれます。コリンエステラーゼは肝臓でつくられる酵素です。GOTやGPT、γ-GTPが比較的急に肝細胞が壊されたときの指標になるのに対し、コリンエステラーゼは慢性的な変化にも反応するので、治癒経過を観察するときにも用いられます。正常値は男性203〜460IU/l、女性179〜355IU/lです。
 アルカリフォスファターゼは体内のあらゆる臓器や組織に存在しますが、特に肝臓や総胆管、腎尿細管などに多く含まれます。これらに障害があると高値になります。また、骨でもつくられるため、くる病や骨軟化症などでも数値が上昇します。正常値は80〜260IU/lです。

数値の変化を見て、健康づくりに役立てよう

 健康診断や人間ドックは“受けて終わり”ではなく、あくまでも自分の健康状態を知る手段です。検査の結果が「異常」とか「精密検査が必要」などと出た場合は、すぐに受診しましょう。また、「異常なし」との判定が出たとしても安心してはいけません。判定は、その時点での検査で問題がないということを意味しているにすぎないからです。1度だけの健康診断や人間ドックの結果に安心して、健康を害するような生活習慣を続けては、将来、取り返しのつかないことになりかねません。
 大事なのは、毎年、検査を受けることです。そして検査結果を取っておき、検査のたびに過去の数値と比べ、どのように変化をしているかをチェックしましょう。もし数値が異常値に近づいているとしたら生活習慣を見直し、改善するように努めましょう。それでこそ、検査値が生きてくるというものです。


◎アイソザイムとは?
 同じ基質に働く酵素でありながら、分子量、酵素特性、および免疫化学的性質の異なる一群の酵素のことをいいます。

正常値
GOT 10〜40IU/l
GPT 5〜40IU/l
LAP 男性80〜170IU/l、女性75〜125IU/l
LDH 230〜460IU/l
LDH1 21〜33%
LDH2 36〜46%
LDH3 23〜32%
LDH4 1〜6%
LDH5 0〜5%
コリンエステラーゼ 男性203〜460IU/l、女性179〜355IU/l
アルカリフォスファターゼ 80〜260IU/l

*注 検査の正常値・基準値は絶対的なものはありません。記事中にあげたデータは臨床で使われているものの一例です。


2001年9月25日

※この原稿は臨床検査技師が監修しています。

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