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Special Edition
  『院内感染』 患者が予防できることはあるのか?
  院内感染を完全に防ぐのは無理!?


 院内感染を防ぐには、清潔な環境の保持や手洗いの敢行なと、病院側の対策が大切なのはいうまでもありません。とはいえ、実は病院側が対策を一所懸命におこなっても、防ぎきれない「院内感染」があるのです。このことは、病院を利用する患者として、知っておく必要があるでしょう。

 

体内の常在菌が暴れ出す

 人間の体の中には、非常にたくさんの微生物が棲みついています。口や鼻、皮膚や大腸には常在菌と呼ばれる菌がいつも生息しているのです。健康体で免疫力がしっかりしている時は何の問題もありませんが、病気で免疫力が落ちると常在菌が急激に繁殖して悪さをすることがあります。
 死亡事故として最近話題になった東京世田谷区の集団院内感染事件は、「セラチア菌」が、点滴液に混入したのではないかとみられていました。このセラチア菌は、口や便のなかにしばしばみられる常在菌ですが、免疫力が低下した患者では、もともと体内にいた菌が血液に侵入し、死亡してしまうこともあります。

 

抗生物質が効かない「耐性菌」

 感染症は主に抗生物質を用いて治療を進めますが、近年抗生物質の効かない強い菌が現れるようになってきました。それが「耐性菌」と呼ばれるもので、代表はMRSA(メチシリン耐性黄色ブドウ球菌)感染症と呼ばれるものです。黄色ブドウ球菌自体はありふれた細菌なのですが、ときに肺炎や敗血症を起こします。そのため第二次世界大戦後は黄色ブドウ球菌に対して、抗生物質を大量に使う治療が主流となりました。ところが近年この抗生物質に耐性を示す強い菌が出現してしまったのです。
 強い菌を殺すために新しい抗生物質が開発され、それにまた耐性を獲得する菌が現れるというくり返しの中で、黄色ブドウ球菌はやっかいな感染症「MRSA」に変化していきました。病院は抗生物質を使う機会が非常に多いため、薬剤耐性菌を作りやすい環境にあるということを私たちは忘れてはいけません。

 病院は病気の人が大勢集まっているため、病原菌の浮遊がとても多いところです。また病院によって院内感染対策への姿勢が違うというのも現実です。院内感染を避けるためには、まず私たち自身が感染症の知識を持つことから始める必要があるといえるでしょう。

 

<院内感染で問題となる主な微生物の例>
・MRSA(メチシリン耐性ブドウ球菌)
・VRE(バンコマイシン耐性陽球菌)
・緑膿菌
・レジオネラ菌
・結核菌
・セラチア菌
・真菌類(カビの仲間)

<参考資料>
・『感染症から身を守る本』国立感染症研究所感染症情報センター長
 岡部信彦著 KAWADE夢新書
・『ここがおかしい菌の常識』青木皐著 ダイヤモンド社
・『免疫力を高めるコツ50』ホリスティック京北病院院長 小林常雄著 同文書院
・『殺人病ファイル』21世紀感染症研究会著 日経BP社
・『しのびよる病原体』感染症ファイル
 国立感染症研究所感染症情報センター協力 竹内書店新社
・『バクテリアのはなし』生田哲著 日本実業出版社

2002年3月18日

五十嵐 麻弥子
プロフィール
 妊娠をきっかけにフリーの道を歩み始めたライター。「働くお母さんの育児方法」的な本を読んで「ほこりじゃ子どもは死なない!」という甘い言葉を実践して…つまり掃除をしていなかったら、子どもがぜんそくになってしまったという苦い経験を持つ。ひとり息子のりゅうやは、どんなに具合が悪くても歌って踊れるエンターテイナーな2歳児。
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