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量も質も低下している?
大学時代の野球部OB会に出たある中年男性が、自分たちの時代には望むべくもなかった数人の美人マネージャーをはべらせた若い後輩達を見てこう思ったそうです。「確かに、最近の若い男は背が高くなったばかりか、足はもっと長くなった」と。しかし、男は見た目ではありません。中年男性が足の長さで惨敗というのはひとめでわかりましたが、「精子の濃度」では勝利しているのです。だからといって単純に喜べない問題ではありますが。
「若い男性の精子の濃度や活動能力が、年々減少している」という報告は、90年代以降、米国、フランス、日本など先進各国から続々と報告されています。例えばパリのある精子バンクでは95年までの過去約20年間、精子の濃度は1年に2.6%ずつ減少し、しかも正常な精子の濃度も0.7%ずつ減少するという、量ばかりか質の低下までもが確認されています。その原因として「環境ホルモン」の影響が大きいと考えられています。
ところで、ヒトの精子をよくよく観察してみると、イメージ通りすばやい動きをするものの他に、頭がやたら大きくてのろのろとしか動かないものがあるそうです。これについて「カミカゼ・スパーム説」と呼ばれる仮説があります。精子には子宮内をうろついて他の男性が放出した精子の侵入を阻止するキラー・スパーム(コロシヤ精子)と、ひたすら高速に泳いで卵子を目指すエッグ・ゲッター(サキガケ精子)の2種類があり、出所のちがう精子の間でし烈な戦いがくりひろげられているのではないか、というものです。
1988年に最初にこの大胆な仮説を唱えたのは、カップルのボランティアを募って、さまざまな局面で射出された精子を集め分析した、イギリスの研究者ベイカーとベリルでした。ちなみに、この仮説はまだ試験管内実験では確認されていません。
ともあれベイカーとベリルのユニークな研究で、同じ男性が1回に射精する時の精子濃度を調節するある重要な条件がわかりました。それはなんと「性交の相手と一緒に過ごした時間」だったのです。さて、精子の濃度が濃くなるのは一緒の時間が長い場合でしょうか、それとも短い場合でしょうか。
実は、相手と一緒の時間が短かった−−つまり「見張り」の時間が短かった−−すなわち相手の浮気の可能性が高かったほど、精子の濃度も濃くなったそうです。何と正直な、いえいえ、鋭敏なことでしょうか!
2001年10月9日
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