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わたしは糖尿病です 第11回
『食事療法〜病院食 その1』

その"量"にもモノ申す

 さてさて、前回に引き続き、ちゃぶ台をひっくり返したくなるお話し。もとい! 糖尿病治療に不可欠な食事療法についてである。  『ごはん、焼き魚、野菜サラダ、フルーツ』。これはある日の昼食の献立である。一般的に糖尿病は"贅沢病"などと呼ばれるが、私は決して贅沢ではない。バターはコクのあるカルピス・バターじゃなきゃヤダとか、蕎麦は"藪系"のキリッと辛い汁が一番とか、のべつわがままを言っている訳ではない。従って、この献立に一言の文句もない。これで十分な食事である。しかし、しかし! 敢えて言うならば、その"量"にモノ申したいのである。

 ごはんは小ぶりのお茶碗に軽く一杯。おかず(ぶり照り)は通常の切り身の約半分。野菜サラダは並の盛りで、デザートの果物は中くらいのみかんが一個である。

「こんなんじゃ死んじゃう・・・」

 前回紹介した『糖尿病食指示表』の昼食に照らし合わせてみよう。まず、主食のご飯は約220gで4単位(表1)。みかん一個が約100gで0.5単位(表2)。おかずのぶり照りが約45g(ぶりは脂肪が多いので、ことのほか小さい)で1.5単位(表3)。野菜サラダは約100gで0.3単位(表6)。野菜は基本的に沢山食べても良いが、かぼちゃやイモ類は表1に属するので要注意。因みに表4の乳製品は朝食で牛乳200ml(1.4単位)を飲んでいるので無し。別の言い方をすれば、牛乳は飲み物ではなく、立派な食事なのである。さらに表5の油脂は、大さじ軽く一杯(0.5単位)のドレッシングとなり、欄外の調味料は、おかずの味付けに軽く使われる。

 とまぁ、こんな塩梅なのだが、もし出来るなら、ここに書いた量を計ってみて欲しい。如何に少ないかが、よりリアルに分かると思う。  20代後半、盛岡のわんこ蕎麦を95杯平らげた私にとって、この量は酷である。糖尿病の恐ろしさもこの時ばかりはスッカリ忘れ、「こんなんじゃ死んじゃう」と、思わずつぶやいてしまった。まさか本当に死ぬわけもないのだが、それほど意気消沈してしまった私であった。

(つづく)


 蕎麦は信州をはじめ、美味しいところが数々ありますが、根本的な蕎麦の"味"はやはり、江戸の昔から、継承された文化であり、東京には歴史と伝統を今に伝える蕎麦屋があります。その一つの系譜が"藪"の冠を戴く蕎麦屋です。

 藪の蕎麦は、目に鮮やかな緑色っぽい蕎麦で、香り高く、蕎麦そのものの味もシッカリしているので、それに負けない様、つゆも味が濃くなっています。たっぷりの鰹節で取る一番だしと濃い口醤油の絶妙な味。一言でいって、"からい"と云う表現がピッタリだと思います。(蕎麦好きの石川さん談)


2000年12月4日

石川 栄
プロフィール
石川 栄(いしかわ さかえ)、昭和35年1月4日生まれ。 自動車整備士、コック、アニメーション制作を経て昭和62年に物書きとなる。(ライター暦13年)。映画界での取材や評論を得意とし、故黒澤明、松田優作氏にインタビューしたことが自慢のタネ。代表作は漫談家・牧伸二氏の芸能生活35周年記念アルバム「ナンセンスアイランド」(作詞)。冬は今だに長火鉢で暖をとり、魚は七輪で焼くなど、時代に逆行した生活をこよなく愛する、今時珍しい中卒の物書きである。
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