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わたしは糖尿病です 第4回
『教育入院』

教育入院ってなんだ?

 S病院は、都内は元より関東一円に、ダイアベティスの治療ではその名を知られた病院。そんな病院が、家から徒歩10分のところにあるなんて、因果なものだと思った。

 入院患者は、大きく2つに分類される。合併症を併発してしまい手術を必要とする者と、それ以前の場合。私は後者に属し、こうした入院患者を、この病院では"教育入院"あるいは"体験入院"と呼んでいた。ダイアベティスについて正しく理解し、退院後の社会生活において病気を如何にコントロールするかを"教育"する。そして、コントロールするための食事や運動療法などを実際に"体験"する、というコンセプトの入院である。

マインドコントロールで病気をコントロール

 1日のタイムスケジュールは、6時起床。体温、脈拍、尿糖および血糖値の検査の後に朝食。午前中は主に各臓器の検査。尿糖および血糖値の検査と昼食を挟んで午後から講義。講義は1時間の授業が2〜3つあって、ダイアベティスに関する様々なことを学ぶ。それからまた、尿糖および血糖値の検査あって夕食になり、寝る前に最後の尿糖および血糖値を測定し、21時に就寝となる。入院経験の乏しい私にとっては、検査と治療の他はボ〜ッとしていられると想像していたのだが、さにあらず。陽の高いうちはのんびりベッドで横になれないのだから「久しぶりにプラモデルでも作るか」と楽しみにしていた私にとって、この入院生活は、大いに当てが外れてしまった。

 中でも、午後からの講義は苦痛の他には何もない。ダイアベティスの原因や合併症のことを聴けば不安は募り、食事についての講義では、私の"食"へのこだわりを否定され、大袈裟な言い方をすれば、アイデンティティを粉々に粉砕された思いに駆られた。

 「これはマインド・コントロールに相違無い!」と極めて冷静でいようとしても、ズルズルお医者の搦手にハマッていく様で、何から何までイヤになっていく。そんな、諦めの心境で入院生活はスタートした。

 (つづく)


2000年9月4日

石川 栄
プロフィール
石川 栄(いしかわ さかえ)、昭和35年1月4日生まれ。 自動車整備士、コック、アニメーション制作を経て昭和62年に物書きとなる。(ライター暦13年)。映画界での取材や評論を得意とし、故黒澤明、松田優作氏にインタビューしたことが自慢のタネ。代表作は漫談家・牧伸二氏の芸能生活35周年記念アルバム「ナンセンスアイランド」(作詞)。冬は今だに長火鉢で暖をとり、魚は七輪で焼くなど、時代に逆行した生活をこよなく愛する、今時珍しい中卒の物書きである。
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