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赤ひげ診察室の「アトピー・アレルギーお役立ち救急箱」最終回
科学的かどうかは、治療の最重要事項ではない
治る、改善する事実が大切!!
小見出し イメージ 「中医学」は中国4000年の
医療成果を集大成したもの

 「秋深き隣はなにをする人ぞ」……お元気ですか。芭蕉の句の解釈は別 として、秋はなんとも人恋しい季節でもありますね。お子さんだって同じですよ。人恋しいときには、思いっきりスキンシップしてあげましょう。ご主人にたいしては……、オマカセシマス!!

 さ て今回は、いまや私の治療のベースとなっている「中医学」の考え方などを少し詳しく紹介します。中医学というのは、診察から薬の処方、生活養生法、経絡(けいらく・ツボ)療法などの体系的な中国古来の伝統医学です。これにたいして漢方は、中医学の薬(漢方薬)だけを日本的に実用化させた、日本独自のものです。ですから、漢方=漢方薬で、和漢として中医学と区別 したほうがいいのですが、実際には中医学全体も漢方と呼ぶことも多いようです。ここでは、和漢と区別 する意味で中医学という言葉を使って解説します。

 中医学では、アトピー性皮膚炎(以後アトピーと略す)をどのようにとらえているか、アトピーの発症メカニズムの一部を例に、お話ししましょう。

 中医学の理論は科学の理論とは相入れません。たとえば生薬。薬ですね。これを中医学の理論にしたがって使うと、確かに効果 があります。つまり薬に関する理論は、およそ5000 種類もある生薬の使い方を集大成した壮大なマニュアルだと考えられます。しかも中国4000 年の歴史のなかで生薬の効果を見極め、その組み合わせによる諸症状への処方が確認されてできたわけですから、統計的にはこれほど確かなものはないといってもいいものです。

 ですから、「生薬の効果的使用法マニュアル」と理解すれば、非科学的だからといった発想は意味がないことが、おわかりいただけるでしょう。ところで、科学的って、どういうことなんでしょうか。手元にある辞典には、「科学=一定領域の対象を客観的な方法で系統的に研究する活動。また、その成果 の内容。特に自然科学をさすことが多い」「科学的=科学の方法に合致して合理的・客観的であること」とあります。わかりますか?私にはちょっと難しいのですが、たとえば前回の話のように、患者さんが故郷に帰るとアトピーが治って、東京にでてくると発症するケース。「故郷に帰るとアトピーが治る」だけでは、非科学的で、なぜ治るかを客観的に証明できないといけないわけです。都会的な悪化因子が少ないとか、ストレスから開放されるからとかは、説明にならないというわけですね。「明らかな悪化因子のA が、東京では数値として80だが、故郷に帰ると10未満に減少する。だからアトピーが治る」といった具合の証明が必要なのです。それはそれで、意味はあると思いますが、ちょっとまってください。

小見出し イメージ 中医学でいう腎の機能低下が
アトピーの赤ら顔の原因

 「科学的=治る」ではないんですね。私たちは医師です。客観的な裏付けも必要ですが、治るという、あるいは改善するという事実が、もっと大切なのです。「科学的でない」「非科学的だから」という理由だけで、ダメだと決めつけてしまうのは、病気治療に関しては過った考え方だと、私は思います。

 北にアトピーが治るという水があれば、「ホントかな」と関心を示す。南にアトピーが改善する温泉があるといえば、「ホントかな」と関心を示す。それが患者さんにたいする、治療をおこなう医師として最低限の責務ではないかと考えています。そうした姿勢のなかから、中医学に関心をもち、その改善効果 に魅せられた私です。
中医学でいう腎の機能低下がアトピーの赤ら顔の原因 では、中医学における「成人型アトピーの赤ら顔」についての考え方を簡潔にご説明しましょう。おおもとは「腎虚」です。アハハっ、いきなりそういわれても、わかりませんよね。

 腎虚というのは、腎の機能低下と考えてください。ここで気をつけていただきたいのは、腎は腎臓とはかなり異なった概念だということです。腎は「腎臓の働き以外に内分泌系(ホルモン)や中枢神経系の一部を含むもので、生殖・発育・成長など、生命活動のおもな原動力となるものすべてを含んだ概念です。腎が衰えると肝に影響がおよびます。この場合の肝も、肝臓とはかなり異なっています。血液コントロールをしたり、情緒に関する中枢神経系の一部などを含む、広い概念です。

 肝には陰と陽と2 つの側面がありますが、肝陽というのは特に自律神経系や情緒活動に密接な関連があります。腎虚の影響が肝におよぶと、この肝陽をコントロールしきれなくなります。その結果 、肝陽は「熱」となって上半身に昇り、顔面や頚部などに熱、すなわち炎症や赤ら顔が出現するのです。

 成人型アトピーの特徴である赤ら顔、そしてなぜ上半身に発症しやすいかは、こういった説明になります。

 また肝陽は、怒りなどの情緒に密接に関連してますので、心理的ストレスによって症状が悪化することも説明できます。したがって治療方針としては、腎を補う補腎系の生薬を使うと同時に、肝陽を抑える生薬、さらに熱を抑える生薬などを加えます。

 こ の基本方針で処方を構成して、さらに個人個人の症状にあわせて生薬を加えることで、改善効果 を高めていきます。

小見出し イメージ 症状改善のため、中医学という
マニュアルと日夜格闘中!!

 もちろん、考え方はこれだけではありません。様々な考え方を、それぞれの症状に応じて駆使し、より適格な診断をしていくわけです。エンドイメージ患者さんを治す、改善させるという根拠を求めて、私は今日も中医学というマニュアルと格闘しています。西洋医学のいい面 と、東洋医学のいい面を、積極的に治療に生かしていきたい。私は、そう考えている医師です。

 では、おだいじに!!

私の考えがまちがっていれば、「guchi@pb3.so-net.ne.jp 」にメールをください。ここでお話することのbackground を知りたい方は、私のホームページをご覧ください。「http://www02.so-net.ne.jp/~guchi


2000年11月6日

「アトピー・アレルギーお役立ち救急箱」イメージ
山口典秀先生
やまぐち・のりひで
医療法人恵明会・恵明会クリニック院長。1951 年生まれ。九州大学医学部卒業。同・脳疾患研究施設(神経内科)、大牟田労災病院、浴風会病院を経て、東京・千代田区で開業。97 年にアトピー・アレルギー専門の恵明会クリニックとして練馬区に移転。日本東洋医学会認定専門医。
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