シニアの健康
 
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シニアを悩ます皮膚トラブル「かゆみ」 第2回
高齢者のかゆみといえば、「老人性皮膚掻痒症」が代表


腕や脚が「かゆい、かゆい!」

 皮膚のかゆみを訴える高齢者を多くみかけます。70歳以上のシニアの半数以上が、かゆみに悩まされているともいわれています。また、65歳以上の発症頻度は64歳以下の約10倍あったとの報告(東京都老人医療センター)もあります。
 湿疹などの原因がなくてかゆみが起こる病気を皮膚掻痒症といいます。その中でも、特に高齢者に起きたものを「老人性皮膚掻痒症」とよびます。
 かゆくなる場所は、外温に影響されやすい腕や脚などに多く起こりますが、腰や背中、お腹あたりがかゆくなる人も少なくないようです。また、かゆみは夜間に強くなる傾向があり、そのため「よく眠れない」と訴える人もいます。
 皮膚の表面はカサカサして白っぽくなったり、ひび割れて赤くなったりします。症状が悪化したり、かゆいからとかき続けると、そこに湿疹ができてしまうので、できるだけかかないようにしましょう。

 

どうして高齢者に
「かゆい!」という人が多いの?

 原因は、ズバリ、“皮膚の老化”です。といってもシワやシミではなく、皮膚の潤いを保つ機能の低下による皮膚の乾燥、つまり「ドライスキン」がかゆみをもたらします。

表皮の構造 イメージ

 皮膚の表面(表皮)はいくつもの層に分かれていますが、そのうち、もっとも表面に近いのが角質層で、ここでは角質細胞が10〜20層も重なっています。角質細胞と角質細胞の間をセメントのように埋めているのが角質細胞間脂質で、角質細胞間から水分が蒸発するのを防いでいます。さらに、皮膚の表面には、表皮の奥にある皮脂腺から分泌された皮脂が汗などと混じり合って皮脂膜をつくり、水分の蒸発を防いでいます。また、角質細胞には、天然保湿因子があり、水を蓄えて膨らみ、皮膚に潤いと柔軟性を与えています。
 こうした物質がきちんと機能して皮膚の潤いが保たれているのですが、年齢を重ねると、その機能が弱まり、その結果、かゆみが起こるのです。

 

肌は年齢とともに、
ドライスキンになっていく

 年齢とともに、肌の潤いがどのようになくなっていくかをちょっとみてみましょう。
 角質細胞間脂質に含まれるセラミドの量が50歳を過ぎると、20〜30代に比べて半分になっているといわれます。特に脚は、腕やお腹、背中に比べて、セラミド量の減少が著しいことがわかっています。セラミドの量が減ると、角質細胞の間にすき間ができ、そこから水分が逃げやすくなります。
 皮脂の分泌には性ホルモンが関係しています。思春期になると性ホルモンが多く分泌されるため皮脂の代謝も促進されますが、一般に25歳を過ぎると性ホルモンの分泌は減少しはじめ、それに伴い脂質の分泌量も少なくなります。性ホルモン、脂質ともに、更年期に向けて分泌量はさらに減少し、皮脂腺が薄くなり、皮膚の表面から水分が蒸発しやすくなります。
 また、天然保湿因子は柔軟性を失い、つぶれた状態になり、角質細胞内にたくわえられていた水分量が減ります。
 つまり、年を重ねると、否応なしにドライスキンになるといえます。なお、冬季にかゆみがひどくなります。これは、冬になると体全体の機能が低下して皮脂の分泌などがいっそう減ってしまうことや、空気の湿度が低くなることが原因です。


次回は「老人性掻痒症の治療と予防」です。

2002年6月10日

監修:海老原 全(東京都済生会中央病院 皮膚科 医長)
プロフィール
海老原 全(えびはら・たもつ)
 昭和61年慶應義塾大学医学部卒業。同年4月慶應義塾大学医学部皮膚科学教室入室。平成3年慶應大学医学部皮膚科助手、4年同教室連絡者(医局長)、5年同診療科医長(外来担当)、8年東京都済生会中央病院皮膚科医長(慶應義塾大学医学部皮膚科講師兼任)に就任、現在に至る。日本皮膚科学代議員、日本臨床皮膚科医学会雑誌編集委員、日本毛髪美容学会理事を務める。専門は自己免疫性水疱症(天疱症・類天疱症・IgA天疱症)。最近はもっぱらアトピー性皮膚炎・接触性皮膚炎の臨床。
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